5月29日 神奈川新聞社会面で「鎌倉の下水放流」について収束報道。


▼神奈川新聞(平成28年)5月29日(日)社会 22面

鎌倉の下水放流

1カ月 ようやく収束

関係者から安堵の声

 下水道管の破損により鎌倉市{.keyword}が下水を海
に放流していた問題が、発生から1カ月を
経てようやく収束を迎えそうだ。市は27日
に仮設の排水管の増設を完了し、4月22日
から続けていた海への放流を完全に停止し
たと発表した。周辺ではイベントが一部中
止となるなど影響も生じていただけに、関
係者からは安堵の声が漏れる。海水浴シー
ズンを前に、6月上旬に公表される海水浴
場開設のための水質調査結果が待たれてい
る。            (北川 文)
 
 下水の放水量は、開始時点で1日当たり2万2千立
方び、市南部の1万7千世帯分に及んだ。市はバキュ
ーム車(4い)で汚水を浄化センターヘ運ぶ対応を取
ったが、”焼け石に水”状態。住民に節水を呼び掛け、
4月末に仮設管2本を設置したものの、排水量{.keyword}の多く
なる日中には海への放流を続けざるを得なかった。
 海水への影響を計るため市はほぼ毎日、水質調査を
実施。基準値を上回る大腸菌{.keyword}群の検出範囲は、当初は
放流口付近に限定されていたが、5月半ばに3度、材
木座と由比ガ浜{.keyword}の海水浴場を隔てる滑川河口付近で基
準を超えた。18日以降の検出値は基準を超えていな
い。
 周辺に影響も出ている。21、22日に由比ヶ浜海岸{.keyword}で
開かれた鎌倉ビーチフェスタでは、カヌーやサーフィ
ン体験などが「参加者の健康面に配慮」(主催者)し
て中止となった。
 1ヵ月以上も放流が続いたのは、大型連休前に収束
できなかったことも一因だ。市は当初、仮設管2本
で全量を送水できると見込んでいた。だが設置場所に
高低差があったため送水量を十分に確保できず、業者
からも太い管を取り寄せられないまま「連休と海水浴
の時期に重なってしまった」(市都市整備部)。
 「今後を心配すればきりがないが、ぎりぎり間に合
ってほっとした」。本格シーズン入り直前の放流停止
に、市海浜組合連合会の増田元秀代表は胸をなで下ろ
した。鎌倉漁業協同組合は魚の検体検査を実施し、数
値に問題はないとしている。
 海水浴場の開設は、県が毎年実施する水質調査の結
果が一つの目安となる。鎌倉保健福祉事務所による
と、鎌倉エリアでは5月中旬に5地点で計4回水質を
計測。結果は6月に公表される予定で、平均値が「適」
となれば市が開設を判断する。「不適」の場合は調査
が継続される。

 ◆鎌倉の下水流出 4月14日、稲
村ガ崎の国道134号の歩道が深さ7㍍
にわたって陥没する事故が発生。歩道
下に埋設されていた下水道管1本の継ぎ
手部分が破損し、漏水した。管の下の地
盤も崩落したため、市は修復工事が困難
と判断。4月22日から消毒処理した下水
を海に放流する緊急措置を取っていた。
破損した下水管の本格復旧は、崩落した
地盤の調査が必要なため、現時点で見通
しは立っていない。