北鎌倉隧道の保存について朝日新聞編集委員・宮代栄一さんが記事を掲載しています。


 先の6月議会で鎌倉市{.keyword}議会でもこの問題に対する「意見書」「決議」が全会一致及び多数により採択されていますが、その後の経緯や文化財{.keyword}専門委の判断などが記事になっています。

 私は景観の保全{.keyword}という立場から残してほしいと思っています。議会はボールを
市長に打ち返し、市文化財{.keyword}専門委は結論を出し、再びボールを松尾市長へ打ち返しました。松尾市長の決断にかかっています。

 よりよい方向へ舵を切っていただければと思っています。

 

   朝日新聞夕刊3面 2016年7月20日 Web版

 鎌倉の尾根にある隧道「保存を」

 市文化財専門委、歴史的価値を評価

 鎌倉時代{.keyword}の絵図に描かれ、鎌倉五山{.keyword}第二位の円覚寺{.keyword}(国史{.keyword}跡)の内外を区切る境界だった、神奈川県鎌倉市{.keyword}の小さな尾根。安全確保を理由に開削工事が進められ、それに対する反対運動も起きているこの尾根について、市の文化財{.keyword}専門委員会は「歴史的な価値が高く、保存すべきだ」との意見を出した。

 JR北鎌倉駅{.keyword}北にある尾根には昭和初期にうがたれた手掘りのトンネル(北鎌倉隧道〈ずいどう〉)があり、近隣の通学路になっていたが、内部に亀裂が確認されたため、市は昨年、通行を禁止。トンネルを含めた尾根の先端を切り崩すことを決め、今年4月から工事に着手していた(現在は休止中)。

 今月8日にあった文化財{.keyword}専門委(会長は河野眞知郎{.keyword}・元鶴見大教授)では、出席した7人の委員全員が「問題の尾根は円覚寺{.keyword}の境界として鎌倉期から機能しており、歴史的価値について疑問はない」との点で一致。「今後はむしろ、史跡への追加指定を目指すべきだ」との見解が示された。

 これまで市文化財{.keyword}部は尾根について、「明治時代の横須賀線{.keyword}の開通時に先端が削られた可能性が高く、文化財{.keyword}としての価値は損なわれている」として開削工事を進めてきたが、文化財{.keyword}専門委は「尾根の先端がどの程度削られたかは判断しづらい」としながらも、「そのことで尾根の本質的な価値は損なわれていない」と判断を下した。

 市は、ユネスコ{.keyword}の諮問機関から「不記載(不登録)」とされた鎌倉時代{.keyword}の寺社や遺構群の世界文化遺産{.keyword}登録への再挑戦を目指し、現在、「武家の古都・鎌倉{.keyword}」に代わる新しいコンセプトの練り直しを行っている。

 問題の尾根の開削をとりやめるかどうかは、今後、市長の決断に委ねられる。

 しかし、世界遺産{.keyword}の重要な構成資産の一つになると思われる円覚寺{.keyword}の成立にかかわる歴史的な尾根を、このタイミングで破壊することにどんな益があるのだろう。文化財{.keyword}の保全{.keyword}と住民の安全確保を両立する代案の創出に、ここはぜひ頭をひねってほしい。

編集委員{.keyword}・宮代栄一)

 

鎌倉の尾根にある隧道「保存を」 市文化財専門委、歴史的価値を評価:朝日新聞デジタル