ふるさと「納税」記事、神奈川新聞の紙面トップを飾る。
ふるさと「納税」は、正しくは、ふるさと寄附金です。
▼神奈川新聞 一面 2015年9月24日
全国で熱帯びる争奪戦
ふるさと納税 増収か減収か
寄付した人に特産品などの 返礼品を贈呈する動きが過熱
している「ふるさと納税」を めぐり、県内自治体に期待と
焦りが交錯している。他地域 から寄付を呼び込めれば増収
となる反面、居住者が別の自治体に寄付すると住民税を控
除した分だけ減収となるから だ。県内市町村の半数は返礼
品を設けていないが、全国的 な納税者争奪の様相に「手を
こまねいていると、税がよそに流出する」(県市町村課)
との危機感が膨らむ。
(高本雅通)
■”収支”初推計
ふるさと納税の寄付総額と減税した控除額のどちらが多いのかー。県
がその”収支”を初めて推計したところ、33市町村が2014年に受け
取った寄付額は約6億円。これに対し、住民税の寄付控除のうち、ふる
さと納税が適用になる割合から推計した控除額は約11億円に上った。
差し引き約5億円のマイナス。神奈川には地方出身者も多く、故郷の
自治体に寄付するケースは少なくな いとみられる。県市町村課は「地方
の自治体が用意する返礼品には和牛など魅力的な品物も多く、影響があ
るのでは」とも推測する。
県内5億円流出
■返礼品で追随
ふるさと納税は、実質2千円の負担で地方の特産品が手軽に入手でき
るとあって人気は高まるばかり。自治体にとっては寄付額から返礼品の
経費を差し引いた分が収入となり、歳入確保と地元PRを狙い追随する
動きが広かっている。
前年度の寄付実績が4件計7万円たった小田原市は9月から返礼品を
導入。17日までのほぼ半月間で寄付申し込みは292件計544万円に
上り、担当者は「干物や梅干しのセ ットが人気。地域PRになり大変あ
りかたい」と満足げだ。
県の調査によれば、県内では17市町が返礼品の特典を設けている。未
実施の16市町村でも、相模原、平塚、逗子、伊勢原市、葉山、寒川、大井、
愛川町の8市町が「実施に向けて検討中」と回答。今秋に導入予定の寒
川町は「先行自治体の実績を見て効果があると判断した」と期待する。
■自治体支援へ
鎌倉市は7月に返礼品を始め、1 力月強で寄付申し込み額は昨年1年
間の2倍超にアップした。昨年は寄付額約240万円に対し市民税の控
除額が約3100万円だったといい、市は「歳入確保の面からも放っ
ておくわけにはいかなかった」と経緯を打ち明ける。
一方で、横浜、藤沢、大和、海老名、座間、綾瀬市、開成町、清川村
の8市町村は「実施の予定はない」と回答。県市町村課は「理由はさま
ざまたが、中にはモノで寄付を募る手法に違和感を抱く自治体もあるよ
うだ」とも話している。
ただ、4月から減税対象となる寄付の上限が2倍となった上に手続き
も簡素化され、納税者獲得競争はさらに熱を帯びる見通しだ。
返礼品なしの自治体はより厳しさが増すことになりかねず、17日の県
議会本会議で自民党の田中信次氏 (横浜市泉区)の一般質問に答えた
黒岩祐治知事は、自治体支援に乗り出す考えを明らかにした。
「基本的には市町村長の判断だが、 このままでは全体のマイナスが拡大
していく恐れがある。税が流出しており、積極的な対応が必要という問
題意識を共有し、意欲ある市町村を支援していきたい」
◆ふるさと納税
個人が応援したい自治体に2千円を越える寄附をした場合、居住地の
所得税と住民税が一部控除される制度。都市と地方の税収格差の是
正を目的に2007年に当時の菅義偉総務相(衆院神奈川2区)が創設を
表明し、08年に始まった。